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いゃ~~、もうね。 感動 x 2 の週末でしたよ!
こんな内容で投稿して良いものか?と二の足を踏むところですが、それ以上にこの週末が凄すぎて、どこかに吐き出したい気持ちもあり記事にしようと思いました。
千葉ロッテファンとなり、約24年。こんなに感動する日が来るとは思いもしませんでした。
2005年の日本一、2010年の日本一以上に、この2試合の感動は凄まじいものがありました。
野球を見て感動で涙が出たのは、「福浦選手 引退試合」と今回の「佐々木投手 完全試合」だけです。
本当に、佐々木投手・松川捕手、千葉ロッテの選手・監督・コーチ、関係者の皆さん おめでとうございます。
今回、様々な野球解説者の方も解説されておりますが、佐々木選手の入団から今回の完全試合達成の過程において、「マネジメント的アプローチ」が要所に感じられましたので、自分なりに考察してみたいと思います。
捕手の配給マネジメント
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今回の完全試合の達成において、どの野球解説者の方も佐々木朗希投手の”怪物ぶり”だけでなく、高卒1年目ルーキーの松川捕手の配給にも称賛が耐えないところだと思います。
あの捕手に対して非常に辛口なコメント連発の元ロッテ里崎さんも、自身のYoutubeチャンネルにて松川捕手の配給を称賛されている通り、高校生らしからぬレベルの高さはプロ野球レジェンドから見ても”舌を巻く”ものだったことが分かります。
9回を投げ抜く体力だけじゃない球数のマネジメント
ご存知の通りだとは思いますが、完全試合は1人の投手で、9回 27個のアウトを取ります。
昨今のピッチャーでは、約100球の球数が交代の目安とされ、ピッチャーの調子が良かったとしても、5回~8回までの間で100球を投げきってしまうケースが殆どです。
ましてや、高卒3年目とはいえ 今年から先発ローテーションとして中6日間隔での登板は初めての佐々木投手。当然体力的なリスクは抱えていたと思います。
ストレート中心にフォークを決め球にしたシンプルな配給の組み立て、ストレートは基本的にストライクゾーンでゴリゴリに押していくスタイル。
そんな中で、フォークの落とし所や、要所でしっかりとストレートでも横幅を使いながら、且つ確実にストライクゾーンでカウントを稼いでいく。
打者もストライク先行で押されていく中で、分かっていてもフォークに手を出さざる得ない状況を作り出す。
佐々木投手の160kmを超えるストレートがあるからこその配給と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、それにしてもシンプルで且つ球数も抑えられる有効な配給だったと思います。
試合全体を通じた打者の意識を ”惑わせる” 配給のマネジメント
特に配給の秀逸さが現れたのは、2020年、21年と首位打者を獲得したオリックス吉田選手との対戦。日本球界で、最も三振が取れない打者と言っても決して過言ではない好打者です。その好打者に対して3回の対戦の全てで三振を奪っています。
- 1打席目の配給
- 1球目:外角一杯のストレート(160km)で見逃し
- 2球目:ど真ん中からのフォークで空振り
- 3球目:外角に逃げる様なフォークで空振り
ストレートでゾーンいっぱいでストライクが取れる事を見せておいてからの、140km台後半のフォークボール。
- 2打席目の配給
- 1球目:インコースへのカーブで見逃し
- 2球目:連続でインコースへのカーブに空振り
ここまでの打席で、まだ試合中1球も見せていないカーブを初球・2球目とインコースに投げ込みます。吉田選手も、ストレート&フォークのイメージが強く、吉田選手としたら”虚を突かれた” といった所でしょうか。 - 3球目:ど真ん中からのフォークでファール。ほぼ1回の2球目と同じ軌道
- 4球目:真ん中低めのフォークで空振り
カーブからの落差を変えた高速フォークを2球。1打席目の決め球と同じ球でしたが、初球からのカーブで狙いを絞りにくくなっている状況では絞り込むことは難しかったと思います。ましてや球速差が カーブとストレートで”約40km” もあれば、簡単には手は出せない状況ですね。
- 3打席目の配給
- 1球目:真ん中低めのストレートで見逃し
- 2球目:同じ真ん中低めのストレート。ワンバウンドでボール
- 3球目:アウトコースにストレートを外してボール
- 4球目:ど真ん中にゆるく落ちるフォークで空振り
1~3球目で、160km台のストレートで押されている状況なので、当然ど真ん中に来たフォークには手が出てしまいます。 - 5球目:インコースよりの163kmのストレートを見逃しで三振
もう、吉田選手にしたら”お手上げ”っと言ったところでしょうか。ここまで球速差を見せられて、しかもストライク先行で押されたら もう厳しいですよね…
配給で顕著だったのか、この試合を通じて3球しか投げていないカーブの2回を吉田選手に対して投じています。持ち玉としてスライダー・フォークのイメージが強い佐々木投手に、球速差約40kmもあるカーブを見せ玉ではなくカウントを取りくくる球として投じている点ですよね。
本当に、度胸があると言うか… 何と言うか… でも、この二打席目の吉田選手の打席でこの”奇襲”をやってのける”計算高さ”に秀逸さを感じてしまいました。
松川捕手の試合後のインタビューでも本人が語っている通り、あの中盤の吉田選手の打席でカーブを投じることにより、以降の打者にもカーブの有効性を植え付けることに成功し、その後のストレート・フォークに対する迷いを産ませる非常に効率的な戦略的なマネジメントだったと思います。
佐々木投手の育成マネジメント
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もう一つ、昨年まで千葉ロッテで投手コーチ(今年から統括コーディネーター)の吉井理人元投手コーチの育成プラン・マネジメントが挙げられると思います。
体力づくりに割り切った育成マネジメント
大船渡高校での岩手県大会決勝での佐々木投手登板回避が話題に挙がったところは記憶に新しいところです。ロッテ入団1年目、周囲からは「令和の怪物」として鳴り物入りで入団した佐々木投手でしたが、実態は成長しきれていない18歳の体に、160kmを超える速球を投げ込む”強い負荷”に伴い、ほぼ故障状態だったとのこと。
故に佐々木投手を育成するに当たり、「体力づくりに割り切った育成プラン・マネジメント」として佐々木投手のプロ野球人生が始まりました。
この”ノースロー育成”が、当時の野球解説者の中でも賛否両論を巻き起こし、千葉ロッテの育成計画に「温室過ぎる」「球団はファンが期待する選手を見せるべき」などなど、様々な意見が上がっていました。
そんな周囲の声も気にせず、井口監督・吉井投手コーチは、3カ年の育成プランを策定し、逐次体力データなどを収集。佐々木投手の体力面での成長をモニタリングしながら粛々と育成プランを遂行していったとのこと。
元西武、巨人などで活躍し、その後に西武や楽天にて監督・コーチを努められたデーブ大久保さんこと”大久保博元さん”も、自身のYoutubeチャンネルで当時の佐々木投手の育成プランについて、井口監督・吉井コーチ ほか球団のコーチからの裏話などを解説しており、その”緻密さ”に驚きを隠せないといったところでした。
- 1年目:故障箇所の完治とプロの投手としての基礎体力づくり
- 2年目:投球フォームの修正、変化球や先発での長いイニングを想定した投球のトライアル(中10日での登板など)
- 3年目:中6日間隔での登板 ※今年
すでに、入団時から3年目の”ローテーション入り”を見越した育成計画を策定されいる点についても、その”期待度の高さ”を感じますが、1年目の基礎体力づくりへの割り切り、周囲からの固定概念にブレることなく、データのサンプリングと目的・狙いに対する”差”をモニタリングすることで、逐次現在地を見失わないようにする取り組み。
こういった全てのマネジメントを通して、現在の佐々木投手を作り上げたと言っても過言では無いと感じてしまいます。
マネジメントの威力
今回、試合をコントロールする”捕手”としてのマネジメントと、育成を観点とするコーチとしての”マネジメント”を取り上げてみました。
「結果が出ているから」というわけではなく、
- 捕手は試合に対する”勝利”からのバックキャスティングし、リスクとメリット・ディメリットを考えた配給
- 3年後のローテーションを考え、常に対象をモニタリングしつつ計画と現実の”差”をコントロールする育成プラン
この全てにマネジメント的な要素を取り入れ、目標としている対象に到達する確率の最大化を考えることこそ、マネジメントの本質だと感じるところです。
などと、ダラダラ書いてしまいましたが、これからの佐々木投手、千葉ロッテの活躍を心から期待するところです。
おしまい。