Robert Owen-WahlによるPixabayからの画像
今回は、プロジェクトの見積もりについて、その種類と見積もり手法の意味、利用シーンなどについて解説していきます。
見積もりの対象
自分のPM経験は主に「製品ソフトウェア開発」である為、”見積もりの算出”と聴くと、どうしても「労務費(人材的資源)」≒「開発作業見積もり」がをイメージしてしまうが、PMPが範囲とする世間一般的な「プロジェクト」では、見積もり対象もより多くの要素が含まれる。
以下に、”プロジェクトの見積もり”として挙げられる要素を列挙する。
- 品質コスト:
- 試験コスト(Applraisal Costs)
- 修正コスト(Failure Costs)
- 予備コスト(Prevention Costs)
- リスク対策費
- リスク評価・分析コスト
- リスク軽減・回避の実施コスト
- リスク保険
- 予備コスト
- 管理費
- PM/PJメンバーの給与
- PMOの運営コスト
- コミュニケーション費用
- PJ管理ツール・ソフトウェア・ライセンス費など
- 教育費
- 報告・文書管理コスト
- その他
- 事務所費用
- オーバーヘッド用補填費用
と、まぁ一言にプロジェクトといっても、対象となる成果や環境によって、計上する内容は様々。 この中から、運営するPJで該当する費用をまとめて、予算を計画化する必要がある。
見積もり手法
”見積もりの対象”が色々あるように、それを”見積もる手法”も様々。
一概に何が良いか?ってのは、見積もりを実施するシーンや目的によって使い分ける必要がある。 PMPの試験では、代表的な見積もりの手法と目的を把握しておいて、ケーススタディな見積もり問題で、何を選択するべきか?を判断するような問題が出させる。
以下に、主要な見積もり手法を列挙。
- 類推見積もり:精度ガバガバだけど、見積もり提示までの期間・コスト最小
- これまでの経験値や、計画するプロジェクトと類似するプロジェクトがあれば、その結果を使って概算レベルで算出する見積もり手法。
- まだプロジェクトの内容が「ざっくり」としか決まっていない中で、翌年の事業計画(予算取り)などの際によくつかったりする。
- パラメトリック見積もり:精度は良くないが、見積もり提示まで期間・コストも抑えられる
- プロジェクトの”規模”をいくつかのパラメータとして定義して(Ex:ソフトであれば要求の個数、手配できる人の数、確保出来る期間などなど)、類似プロジェクトの各パラメータを対比させて、ざっくりと算出する。
- 精度面については、「類推見積もり」よりは、若干期待できるものの、±10%までの見積もり精度は到底達成できない。
- ボトムアップ 見積もり:精度はめっちゃ高い! だけど見積もりまでのコストがバカ高い!
- 各作業の構成要素を洗い出し、各要素に対して実務者・有識者が細かく見積もりを行い、見積もりの結果を積み上げてトータルの見積もりを算出する方法
- 上記2つの見積もりよりも遥かに精度は高いが、PJとしての効率化などの要素については、全く勘案していないことが多いため、びっくりするほど大きな見積もりになったりする。
(このままの数字を計画として計上してしまい、大問題になった経験あり…) - また、構成要素を細かく見積もる為、見積もりにかかるコスト(人・モノ・金)が膨大にかかってしまう点も、問題。どうしても実務者は、リスクを取りたがらないので自分なりのコンティンジェンシー・コストを細かく乗せる傾向も強く反映されるので、PJの計画を策定する際には、各要素の見積もりの意図・妥当性を評価する必要がある。
- 三点見積もり:精度に”難あり”の見積もりを3点並べて、「いいとこ取り」しちゃう見積もり
- ”類推見積もり” や ”パラメトリック見積もり”の手法で、担当者 or パラメータなど実施条件を変えて算出された3つ以上の見積結果を、「最頻値」「悲観値」「楽観値」の3種類に分けて、妥当な見積もり結果を算出する。
- 算出する計算式は以下の通り
- 期待値 = (「楽観値」+「悲観値」+(「最頻値」x4))÷ 6
例題
問題:
金融システムの更新プロジェクトを計画することとなり、コストの見積もりに際して会社で規定されている「見積もりソフトウェア」を利用することとなった。
このソフトウェアではプロジェクトの特徴に関するパラメータが複数用意されており、パラメータを設定する事で会社のこれまでの実績データから該当PJの見積もりが算出される仕組みである。
このツールの見積もり手法は以下のどれに該当するか?
1. ボトムアップ見積もり
2. パラメトリック見積もり
3. アクティビティ所要時間 見積もり
4. 類推見積もり
採用するソフトウェアに対して、規定されたパラメータを入力することで、会社の実績値のデータから見積もりを算出する。まさに、複数の”パラメータ”から、算出される手法である為、正解は「2.パラメトリック見積もり」となる。
まとめ
今回は、「見積もり手法」について解説してみました。
実際のプロジェクトを運営していても、この辺りの見積もりを”適当”に計画書に記載してしまうと、数字だけだが独り歩きして、収集がつかなくなる なんて話はよくよくあること。
見積もりを算出した方法・根拠については、計画時にステークホルダーにちゃんと提示し、計画とのズレが発生した場合に何が当初の見積もりからズレたのか?を説明できる状況にしておく事が、むちゃくちゃ重要になる。
見積もり算出方法の定義・考え方については、PMPの資格取得だけの勉強ではなく、実務での利用を想定して覚えておいて損は無い部分だと思う。